2024.08.02

勾留決定したのに2日後に釈放!外国人の窃盗事件

今回は、実際に弊所の弁護士が担当した刑事事件の解決事例をご紹介します。

事案概要

都内の高級スーパーで、外国人が窃盗で逮捕された案件です。

19時ごろ、旅行で日本に遊びに来ていた外国人が、ウイスキー1瓶を鞄に入れて会計せずに店内から出ようとしたところを店員に取り押さえられました。
その後、警察に引き渡されて逮捕されました。

被疑罪名は、窃盗罪です。

逮捕から2日目の弁護活動の内容

逮捕されたのが夜だったので、翌日の午前中に警察署から弊所に連絡がありました。通訳人を手配し、昼過ぎに接見に行って、弁護活動を開始しました。

ご依頼者様としては、確かにウイスキーをバッグに入れたとのことでした。

しかし、その後に、その日の晩御飯を考えたり、娘や孫へのお土産を考えながら店内を歩いていたところ、バッグにウイスキーを入れたことを忘れてしまい、そのまま店を出てしまったとのことです。つまり、盗む意思(故意)はなかったということでした。

ご依頼者様のご意見を尊重し、犯意を否認して無罪主張する弁護方針で進めていくことにしました。

この日に行った弁護活動は、大まかに以下の3つです。

①依頼者様が夫のメールアドレスを覚えていたので、メールで現状をお伝えしました。かつ、身柄解放のために、日本に来て欲しいというお願いをしました。

②ウイスキーを盗ってしまったお店に連絡をして、商品を買い取らせて欲しいという旨と、可能であれば許して欲しい(示談をして欲しい)とお願いしました。

③依頼者様に、反省文と誓約書を作成してもらうため、内容を検討しました。

否定しているのに反省文を書くの?

被疑者本人が犯意を否定している場合、《盗んだ》ということを反省したり、謝罪するのではありません。

盗むつもりはなかったとしても、紛らわしい行為をして、お店は通常営業ができない時間があったこと、警察や検察官、裁判官などの日本の機関が動いて、日本に迷惑をかけたことなどについて、反省・謝罪の意思を示してもらいます。

逮捕から3日目の弁護活動の内容

逮捕された方と検事が面談する日です。
検事は彼と面談をして、勾留請求するかどうかを決定します。

この案件では、被疑者が外国人であること、犯意を否定していることから、ほぼ100%勾留請求されると考え、弁護士から意見書などの書面は提出しませんでした。

結論として、検察官は勾留請求しました。

この日の夜に、お店にウイスキーのお金を支払って、清算書面を作成しました。
しかし、「許す」や「被害届を取り下げる」といった文言は入れてもらえませんでした。

逮捕から4日目の弁護活動の内容

この日は、ご本人が裁判所に行って、裁判官と面接する日です。
裁判官は、前日に検察官がした勾留請求を認めるか否かの判断を行います。

弁護士は、本人の面談より前に裁判官と面談をして、本人の反省文・誓約書、お店との清算書面、勾留請求に対する弁護士の意見書などの準備した書面を提出しました。

結果、裁判官は、勾留請求を認めました。

これにより、勾留手続が開始されました。
被疑者は最大20日間勾留されることになります。

逮捕から5日目の弁護活動の内容

この日から準抗告の準備を開始しました。

準抗告とは、4日目に裁判官がした勾留決定の判断が間違っているということを再判断してもらうための手続きです。
再判断をする人は、勾留決定をした裁判官とは別の裁判官で、もう一つレベルの高い高等裁判所の裁判官が3人で審理をします。

準抗告をするために、以下の状況や書類を整えました。

・ご依頼者様の夫と娘が来日したので、身元引受書と誓約書を作成しました。

・夫と娘が予約をしていたホテルについて、勾留満期日まで予約を延長していただき、その資料を提供してもらいました。

・依頼者様ご本人が日々考えていること、思っていることを手紙に記載してもらい、翻訳しました。

逮捕から6日目の弁護活動の内容

準備した資料と弁護士の意見書を裁判所に提出して、準抗告の手続きをしました。

結果、裁判官は、準抗告を認め、身柄が解放されました。
身柄が解放された時の決定書は以下の通りです。

準抗告が認められる可能性は約19%です。高い割合とはいえませんが、低くもないので、諦めずに活動を続けることが大切です。

お困りの際は是非ご相談ください

刑事事件は、スピードが命です。家族や大切な方が逮捕されてしまったなど、お困りの方はなるべく早めにご相談ください。

より詳しい解説は下記の動画をご覧ください。