2024.07.12

被害者が交渉拒否…どうやって示談交渉する?

今回は、実際に弊所の弁護士が担当した刑事事件の解決事例をご紹介します。

事案概要

夫婦が喧嘩をして、男性が逮捕された案件です。

深夜、夫婦喧嘩になり、夫が妻の顔を殴って髪の毛を引っ張り、妻が警察に通報しました。その後、警察が到着し、夫が逮捕されました。

逮捕から2日目の弁護活動の内容

逮捕されたのが深夜だったので、弊所に連絡があったのは翌日の午前中でした。午前中のうちに接見に行き、契約をして、弁護活動を開始しました。

まずは、被害者である奥様が、今どのようにお考えなのか、ご主人(依頼者)の身柄開放にご協力いただけるご意思があるのかどうかというのが気になりました。ですので、担当の警察と連絡をとって、「奥様の連絡先を教えて欲しい」と交渉しました。

しかし、警察は非協力的で、連絡先を教えていただくことはできませんでした。

また、今回は夫婦間のトラブルですので、なるべく早く釈放を認めてもらうためには、釈放された後の住居を定める必要があると考えました。釈放された後も自宅に戻るとなると、被害者である奥様としては怖いので協力したくないとお考えになるのが普通だからです。

逮捕されたご本人とお話をして、一時的にお兄様の家に間借りさせてもらうための交渉を開始しました。

あとは、会社の上司の方に《身元引受書》と《上申書》を書いていただきました。

警察は弁護士にいつも非協力的なのか?

警察がいつも非協力的なわけではありません。

警察側からすると、弁護士に情報提供をするというのは義務ではありませんので、どのくらい協力してもらえるかは、対応してくれる警察官によって異なります。

逮捕から3日目の弁護活動の内容

3日目、逮捕された方と検事が面談する日です。
検事は彼と面談をして、勾留請求するかどうかを決定します。

警察が非協力的だったので、私たちは速やかに検察官に対して、奥さんと連絡が取りたいという旨をお伝えしました。

私たちとしては、まだ奥様と連絡が取れていないので、間違いなく検察官は勾留請求をするだろうと考えて、「勾留請求しないでください」といった内容の《意見書》は提出しませんでした。

結論として、やはり検察官は勾留請求しました。

検察官を通さずに、自宅に行って直接交渉することはできないの?

それを禁じるルールはないですので、可能です。

しかし、これだけ夫婦間でトラブルになってしまっている中で、揉めた相手に就いている弁護士と話したいと思う人はいないと思います。

なので、我々は、警察や検察を間に挟み、奥様が了承をしてくれたら連絡をとる、という方法を選択しました。

逮捕から4日目の弁護活動の内容

の日は、ご本人が裁判所に行って、裁判官と面接する日です。

裁判官は、検察官が請求した勾留を認めるか否かの判断を行います。

この日になっても、奥さんからの返答がなく、我々はあまり弁護活動の成果をあげられずにいました。

ただ、何か活動をしなければ意味がないので、お兄様の家に仮住まいが可能である旨の交渉経過が記載された書面と、会社の方からサインしてもらった《身元引受書》、《上申書》を裁判所に提出しました。

しかし、残念ながら裁判所は勾留請求を認めて、勾留の手続に入りました。

勾留の段階にはいりますと、最長で20日間、身柄拘束されます。

勾留請求が認められたあと、私たちは検察官に電話して問い合わせたところ、「奥様が、夫側についている弁護士とは連絡をとりたくないと言っている。」という回答をいただきました。 奥様側と交渉ができないとなると、この案件は大変厳しい状況となりますので、我々は何かできないかと考えました。

手紙を作成し、奥様に郵送しました

何かこの状況を打開できるものはないかと考え、我々は奥様に手紙を送ることにしました。

手紙の内容は、「今、夫側が何を考えているのか」、「何を準備しているのか」、「代理人として何を考えているのか」、「何をお願いしているのか」といったものです。これらを丁寧に書いた手紙を作成し、旦那様と同じ住所地宛に郵送しました。

幸い、これが功を奏して、奥様からご連絡をいただけて、交渉を開始することができました。

手紙が功を奏し、示談完了・身柄解放

奥様と交渉を開始して、条件を調整することができて、示談を完了することができましたので、勾留の10日満期のタイミングで身柄を解放してもらうことに成功しました。

不起訴処分で終えることができました

身柄解放後も捜査は続きましたが、奥様との示談交渉が成立した点や、初犯だった点、弁護士の《意見書》が考慮され、今回は不起訴処分で終えることができました。

交渉拒否されることはよくある?

多くもないですが、珍しいことでもないです。

相手に就いている弁護士となると、圧力をかけられたり、自分にとって不利な条件を押し付けられるのではないかと不安になると思います。

弁護士は一方当事者の代理人に就きますが、その依頼者の利益だけを完全に追求してしまうと、それは交渉ではなくなってしまいます。

被害者様にとっても意味のある交渉をするのが弁護士の役目です。途中で交渉をやめることもできますので、ぜひ一度話を聞いてみていただくのが良いと思います。

積極的に弁護活動をしなかったらどうなっていた?

特に夫婦や友人・知人同士だと、安易に身柄を解放してしまうことで第二次被害が起きることがあります。「よくも通報してくれたな」などと因縁をつけられて、更なる暴行事件に発展する危険性が生じます。

そのため、裁判所は、身近な関係であればあるほど、身柄解放に慎重になります。

ですので、なるべく早い身柄解放を目指すのであれば、弁護士にご相談いただくのがいいです。 また、今回のケースだと、その後の民事的な側面(離婚)を視野に入れた交渉ができましたので、その点でも、弁護士にお任せいただくのが良いかと思います。

お困りの際は是非ご相談ください

刑事事件は、スピードが命です。家族や大切な方が逮捕されてしまったなど、お困りの方はなるべく早めにご相談ください。