2024.08.23

配偶者が家の財産を盗んだ!これは罪に問われるのか、解説します

今回は、窃盗罪について、事例を用いながら解説します。

こういう場合、窃盗罪になるの?

以下のような場合、窃盗罪にあたるのでしょうか。

妻子の留守中、別居中の夫が家に入ってきて、妻の財布を持っていってしまった。その後、妻のキャッシュカードを使用して、預金を引き出してしまった。

この事例が窃盗罪にあたるのか、条文から一つ一つ検討していきます。

窃盗罪の条文から検討してみましょう

窃盗罪についての条文は以下の通りです。

第二百三十五条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

《窃取》とは、所有者の意思に反して占有を移転することです。
《占有》とは、物に対する事実上の支配をいいます。その物をコントロールできる状況のことです。

今回の事例に上記の条文を当てはめると、別居中の夫が妻のお金をコントロールできる状態にしているので、窃盗罪が成立しそうな印象を受けると思います。

窃盗罪が免除される場合がある

次に、以下の条文について検討してみます。

第二百四十四条(親族間の犯罪に関する特例)
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

上記の条文は、窃盗罪は成立するが、この刑を免除するという規定です。

今回の事例に上記の条文を当てはめると、別居中の夫は《配偶者》にあたりますので、窃盗罪は成立しますが、免除されてしまいます。

類似事例を考えてみます

①夫のお父さんが盗んだとしたら?

夫のお父さんは、配偶者、直系血族、同居の親族のいずれにも該当しませんので、窃盗罪は免除されません。

②長く同棲をしている事実婚状態の夫が盗んだとしたら?

同棲している相手は、配偶者、直系血族、同居の親族のいずれにも該当しませんので、窃盗罪は免除されません。

事実婚状態であれば、配偶者とみなしてもよいのではないかという問題点について最高裁判所まで争われた事件(平成18年8月30判決)があるのですが、結論としては、裁判所は、条文に規定された「配偶者」や「親族」という言葉を拡大解釈したり、類推解釈せず、内縁の配偶者=事実婚の相手にはこの条文は適用しないと判断しました。

③一緒に暮らしている元夫だったら?

元夫は、配偶者、直系血族、同居の親族のいずれにも該当しませんので、窃盗罪は免除されません。

お困りの際は是非ご相談ください

刑事事件は、スピードが命です。家族や大切な方が逮捕されてしまったなど、お困りの方はなるべく早めにご相談ください。

より詳しい解説は下記の動画をご覧ください。